誕生日に、日進へ帰郷しました。

まず盆以来となる、先祖代々の墓参りを——代々といっても、両親が静岡から愛知へ墓を移したとき祖父母の代からを切り離しているので、墓誌には、顔を見たことのない祖父と、大好きだった祖母の二人の名があるだけです。ここからが始まりだという、父と母の強い思いをそこから自分は汲み取ります。

墓石は、園内で類を見ない緩やかな弧を描いて（コメダでいうと稲葉地や日置橋の屋根よう）、まるでわが家の特異さを象徴するようです。しかし、それもこの自分には、この霊園と保育園を抱く白山に似つかわしく思えます。

供養を終え、藤棚で一服し南へ目を向けました。父の愛してやまなかった祖父と祖母が、この風景を、いつの日も安らかに見ているように。

この日は、岩崎城を飛ばし弁天池から竹の山へ向かいました。弁天池も、小さかったころ家族で春のピクニックに来た思い出の場所です。

いまでは、日進竹の山南部特定土地区画整理事業により見違えるほどきれいになっています。この場所で、持ってきたおにぎりでお昼にしました。

日進竹の山は、東名高速道路や県道瀬戸大府東海線など交通の要所を有し、岩崎城、御嶽山、菊水の滝など市の名所が点在します。また、緑豊かな土地柄を活かし、古の時より田畑を耕し日々の営みを続けていました。

なかでもここ、弁天池公園は、竹の山南部の中央広場といえる大切な場所です。その中心にはモニュメント「弁天の塔」が聳え、その台座には、あたかもコメダ珈琲店本店と同じように、近くの園児たちの描いた絵が飾られてあります。

この方角の先にある竹の山のコメダを、一直線ではなく目指しました。

空気の冷えてくるころ到着しました。じつに、13年ぶりの来店です。

前回来たときは、日進の不動産会社に勤めていた当時上司に連れられて入ったのでした。現場が早く終わり、できた時間で向かい合ってゆっくりとした会話の時間をよく覚えています。

そのときの記憶を頼りに席へ向かうと、その手前に、目を奪われる4人並びのカウンター席がありました。

つくりものですが、見事でした。かぼちゃ、松ぼっくり、りんごや熟したぶどうなども置かれ、窓の向こうには、冬らしい壮烈な空が開けていました。

荷解きを終え、午後の軽食で定番のホットコーヒーとホットドッグを注文しました。いつ食べても、どれだけ間が空いても変わらないおいしさです。ウインナーとコールスローの歯応えがたまらず、コーヒーは熱々でした。冷えた身体があたたまり、これから御嶽山を越えるための体力も十分に蓄えられました。

食べながら、少しもの思いをしていました。

四人兄弟で、幼時は和気藹々たるものだったのが、長じてからは偏って姉と親しく、兄とは多く齟齬を生じ、弟にはほとんど冷淡でした。ふと、この四人の並びで、隣の右端に兄、左隣に弟、その左隣の反対の端に姉と、四人そろって腰を落ち着け時間をともにできたならどんなにいいだろう、弟とこの自分が、おいしいコーヒーを飲みながら心から打ち解けられたのなら、その二人を両側から守るように座った兄と姉は、どんなにかうれしいだろうと。

空想を現実にする努力はある、またたとえ現実にならなかったのだとしても、嘆くことはありません。その前に、まずそように描けたということ自体が、いまの自分にとっては、小さくない進歩に感じられました。

おやつを選び、笑顔のあたたかな店長に見送られて外へ出ました。日暮れの近づくなか、ほど近くの登山口から山頂へ登りました。

下山し、もうすっかり暗くなったよく知る道をたどって、最後の目的地、米野木のコメダを目指しました。途中、父親と連れ立った男の子と挨拶を交わせたのに元気を得ました。