コメダ写真館

自分は秋生まれです。秋は秋でも晩秋ですが、文学と歴史にとどまらず芸術全般を愛するのは、おそらくそういった条件と関係があるのでしょう。食欲はといえば、無闇に食べないだけで一年を通して衰えません。

お月見祭の第二夜は、オーレにしました。

満月の近い晩でした。暑さもやわらぎ、少し離れたお店まで歩いていきました。カウンターを一周して、運よく先客のいなかったいちばん明るい席を選びました。見上げたシェードランプがきれいでした。

雲のない満月の晩は、すべてのものが明るく照らし出されるのが染みます。月明かりを浴びた恋人の顔はどんなに美しいだろうと、少年の日より夢見てきました。

スタッフさん同士、ときたま他愛のない笑い声が聞こえてくるほど静かな店内で、スケジュール整理に取りかかる前に、まず口をつけました。

ホイップが唇に触れました。ひるむことなく、マロンドリンクが流れ込んでくるまでカップを傾けました。少しずつです。やがて、微かなぬくもりを舌先に感じるが早いか、やさしい甘みに包まれました。ほとんど、それだけで満足でした。

それから、たっぷり1時間かけて味わいました。冷めていないか心配になったり、頭を使った疲れを感じたり、ただやさしさが恋しくなったりと、タイミングは一様ではありませんでした。それでも、一定の間隔は守り、そのたびに癒されました。

書くときは、カップとソーサーを脇へ退けるのではなく、手帳のほうをその右側のスペースで開きました。自然とオーレを抱え込むような姿勢になり、安らぎを感じました。スプーンは、ホイップが半分溶けてきたときに一度混ぜたのと、最後に底に残ったマロンクリームを掬うのに使いました。最後の最後まで、おいしかったです。

何もかもが、心から行ってよかったと思えるコメダでした。バゲットを買って帰りました。