徳川園の夕涼みの帰りに、葵店へ行きました。

徳川園へ行って来た、と発言すると、ひとによってはいやそうな顔をします。ただしそれは、私見では、この徳川園がもとは第2代藩主光友の隠居所として造営されたのを、明治維新後第19代当主義親が市民を預かる名古屋市に寄贈し、晴れて一般人が立ち入れるようになった経緯に照らしても、尾張徳川家の考えてきたことがわかれば覆ると思います。

かくいう自分も、名古屋の出身ではなく、生来郷土愛がそこまで強くない性分のため、名古屋のひとたちとつきあうのに幾分苦労してきました。しかし、運に見放されない限り死ぬまでこの尾張中村に住むと心を決めてから、それも段々と和らいでいます。

今宵徳川園へは、高校生による邦楽演奏会の初日、菊里高校箏曲部が来てくれました。初登場の昨年に続き、愛知県高等学校総合文化祭での舞台を入れると、三度目の対面です。

菊里高校というと、生徒たちが学校帰りに比較的新しく立派なコメダ珈琲店・星ヶ丘店を気兼ねなく利用できているのかはわからないですが、仮に進学とスポーツが截然と分けられるとして、進学の方面ではいわゆる名門校だと思います。愛知県西部（尾張学区）の公立高校は、自分が高校受験をしていた時代ですと、旭丘高校・明和高校、千種高校・菊里高校、名東高校・昭和高校、天白高校・中村高校という序列があって、内申点に応じ名東高校へ進学した自分からすれば、菊里高校の生徒たちは、いわゆる優等生です。下手に出ることはないものの、演奏会の感想一つ書いて送るのにも慎重に敬意を払わざるをえません。

もちろん、自分は名古屋市立名東高校をいまも、胸の奥底で誇りに思っています。サッカー部が結構強くて、テニス部も充実し、茶道部が存在し教師はみな威厳を備え、当時まだ珍しかった英語科もありました（自分は普通科ですが、2年遅れて進学してきた弟は、その英語科から巣立っています）。制服は、男子冬服は赤と紺を基調としたネクタイとブレザーで、同様のリボンとブレザーの女子冬服は、他校の女の子たちがみんな羨むようなかわいいものでした。夏服は逆に、男子が何の変哲もないのはいいとして、女子はくすんだエプロンみたいだと、名東生の女の子は大勢が文句を言っていましたが、この自分の目には、申し分なくかわいいのはもちろん、名古屋市だからこそなせる英才教育と映っていました。

いま、自分が日常的にもっともよく目にするのは、愛知県立中村高校の生徒たちです。自転車ですれ違うこともあれば、駅へ通じるコミュニティロードで方向を共にすることもあります。他の市町村から、公共交通機関や、ときと場合により自家用車で通っているひとたちもいるでしょう。そんな彼彼女らを、この街を、いま、自分は愛しています。

どなたさまも、よい盆を。