新しい思い出
茶屋ヶ坂のおかげ庵を訪ねました。じつに8年ぶりです。
ここは、記念すべき全国1号店だそうです。自分はこれまで2回来たことがあって、最初は、できたばかりのころでした。当時手伝いをしていた父の事務所の事務員さんたちと仕事後にタクシーで来て、女性陣はみんな大はしゃぎでした。父と兄は控えめにしていましたが、その様子を見ることができて、父は内心とても喜んでいたに違いありません。
2回目は、その後10年ほどしてからです。千種区に住んでいた当時、家から出られないほど調子を崩していたある時期に、気にかけてくれた弟が彼の車で連れてきてくれました。
無口でしたが、どちらも、特別な記憶です。
わらび餅は、兄の好物でした。自分はそこまででもなかったですが、きなこが好きなのでときどき夏に食べました。
しかしこのおかげ庵の本わらび餅は、自分が知っているわらび餅とは全然違っていました。色も、食感も甘みもです。
先日、インスタグラムのおかげ庵公式アカウントでおかげ庵の本わらび粉について学ぶ機会がありましたが、本物はこうも違うとは。やんわりぷにぷにとろっとあまあま、とでも言ったら伝わるでしょうか。それが掬っても掬っても尽きないほどダブルウォールで安心して手に持てるグラスの底に潜んでいて、飲み干すころには、いかに渋い名古屋の男性の一人とて、笑顔を浮かべていました。
こぼれ話というか、おかげ庵へ行ったら自分が必ず買うのが、豆菓子です。
本店や葵店では20個入りを手早く買えたのが、さすが1号店というべきか、茶屋ヶ坂はひと味違っていました。いまも駄菓子屋で目にする斜めに手を入れる透明なプラスチックのケースから、手づかみで、自分で数を決めなければいけなかったのです。
3度目の正直で、どうにか全部で7個獲れました。
「7個ですね?」と、控えめな苦笑まじりに目の前のスタッフさんが数を数えてくれたのが、家へ帰るまで、心をほどよく和ませてくれました。