仕事前にコメダで食べた日の朝です。雨降りの平日にしていつもの満席でした。

コールスローが、毎度追加しないではいられないほどおいしい。ヨーグルトとはまた違う酸味……それがドレッシングによるものなのか、それとももともとの野菜の仕込みによるのかは判然としませんでしたが、とにかく、フルーツの酸味がしました。それもレモンというよりはリンゴ酢のような……。

名前を書いて待っているあいだに、目の前の景色を眺めていました。

この向こう側がテイクアウト専門店で、そのT字路の向こうには、両口屋是清、青柳総本家という尾張名古屋の両雄が居並び、翻ってイートインのカウンターからは、豊橋名産ヤマサちくわと味噌煮込みうどんの代表選手、山本屋本店が、さらに裏手のカウンターからは、ちいかわ名古屋はじめ当地ならではの土産物を数多取り揃えるなごみゃが視界に入らないこともない、ここが激戦地であることは疑いを容れません。

自分は、この場所へ来るのは第一にコメダが目的であるのはもちろんですが、ちくわやはんぺん、ういろうやカエル饅頭をときどき買います。好きだからです。

それは、お向かいさんやお隣さんをなるべく大切にしたいという自然な心理ではあっても、コメダだけが繁盛していたら周りが面白くないだろうといった忖度ではありません。また、コメダを贔屓にすることがそのほかを蔑ろにすることと必ずしも同義でないことも、いうまでもないと思います。

自分は、クオリティを重視するのと同時にバランスを重視します。社会はそのようにして回っていると思いますが、ただ、無闇に対立を煽る無神経は、目につくと悲しくなります。

それはそうと、この日は仕事が昼までで、帰宅してからパスタをつくりました。

本場ローマのレシピとは違い、全卵と生クリームを用いるジャパニーズカルボナーラです。

ただし、これは生クリームのかわりに信州みそを用い、さらにコーヒーフレッシュで若干のまろやかさを補っています。これを自分は、みそカルボナーラと呼んでいます。

他人にはまず食べさせないと思いますし、食べさせるべき家族もいません。そのことを、自分は殊更に不幸だと思っていません。一方で、かつて世話になったうどん屋のオリジナルメニュー「みそ焼きうどん」を手本に、高校時代の恵まれた家庭環境と趣味の時間を礎として自分がオリジナルパスタをレパートリーの一つにできたことは、少しだけ誇りに思っています。

帰宅途中、中村公園、稲葉地公園と並び広域避難場所に指定されている米野公園から名古屋駅方面を振り返ると、超高層ビル群が雲に覆われていました。

晴れの日はいつもこの公園で大勢で遊んでいる子どもたちが、どういう思いで名古屋駅を眺め、はたして人間としてどう成長していくのか、自分にはほとんど計り知れません。ただ、あの地下にはとてもおいしくて、どこよりものびのびと過ごせるコメダがあることは、一人でも多くが知っていたならと時折り思います。