イシガミ
2025/07/28 18:08
城下の夜明け
瀬戸内レモンがすごくよかったから、いちごジャムでローブパンが食べたくなりました。開店直後で空いていたので明るい窓辺のテーブルを選びました。
コーヒーが熱いうちのほうが香りが立つように、熱のこもったローブパンを片方の手でやさしく開くと、いちごのいい匂いがしました。ほんわかしました。考えてみれば、外側からじっくり熱を届かせたところに包丁を入れ、仕込むべきものを仕込んだらなるべく早く閉じるローブパンの仕事だからこんなにもいい香りがするのだと、つくるひとの気持ちとともに、はじめてのように気がつきました。心がぽかぽかしました。
香りを満喫したら、本当のお楽しみであるあんこを盛りました。スプーンで一度にすくい、そっと落として軽くならし、ぺちゃんこにならないように閉じたら、そのつど愛おしむように両手で持って、できるだけ少しずつ食べました。
甘酸っぱいいちごと一緒に、おいしい幸せな時間だけが過ぎていきました。

食後に、残ったコーヒーと釣り合う時間で、中世から近世にかけての城郭と愛知の歴史を勉強しました。
ほどほどで閉じ、さて日差しはどうかなと窓のほうを向くと、長いこと見なかったにわとりと、表の鳥居通を走る名鉄タクシーが目に入りました。
今度は、たまごが食べたくなりました。名タクは、車体と屋根の色が名古屋城大天守と同じに見えて元気が出ました。

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