コメダ写真館

イシガミ
2025/11/17 21:00

きらめく街

愛知芸術文化センターを出て、コメダでコーヒーにしました。

オリーブの樹は、民家も店舗も、枝が歩行者の道を遮るかたちで伸びたままにしてあることがあります。このコメダがそれをきれいに整えているのは、お客さんだけでなく、縁あってその街を通るすべてのひとを大切にする、コメダらしさがよく表われていて好きです。

コメダ珈琲 東桜武平通店

芸術と向き合った疲労はあれど、続きを読みたい本があり、飲みものだけにしました。


その本は、鹿野桃香『地震日記』といいます。

珠洲で能登半島地震に遭い、その後金沢へ移住した写真家による、発災から五日間の記録です。徹底してプライベートな水準からなされた表現で、多くを考えました。

買ったのは、国際芸術祭「あいち2025」期間中のいまだけオープンしている、地下2階のミュージアムショップです。おそらく、著者が奥能登国際芸術祭の運営に関わった縁があるのでしょう。もともと自分は、美術も音楽も文学も古典で自己を形成してきたため、いわゆるアートには懐疑的だし、ミュージアムショップでの買いものもそこまで好きではありません。そうはいっても、記念に何かを買いたくなることはあるし、美術館の体験とは何かを買って帰るところまでだ、ということも考えます。

実際、この間そのショップへ入るたびに、10階の美術館や8階のギャラリーを観てきたあとらしいひとたちが、本や雑貨やコーヒーに真剣な眼差しを注いでいる姿を見てきました。何も買わずに出ていけばさみしくないことはないですが、そうやって、彼らが最後の最後まで愛知県が誇るこの芸術文化センターを楽しんでいけるのは、いっぽうで泡沫のような娯楽が氾濫する名古屋栄にあって、幸福なことだと思います。

薄い一冊ではあれ、本を買ったのは、内容に惹かれたのとともに、限られた条件のなかでそういう体験を提供してくれている、お店のひとに対する敬意のささやかな表現でもありました。


アプリの店舗検索から読めますが、武平通のコメダは、一行アピールがいかしています。いわく、「キレイ 店も人も!?」と。

自分なら、そこに「街」をつけ加えたいと思います。

野々村一男「双身像」と中部電力 MIRAI TOWER

そう、ホイップクリームから蜂蜜がこぼれるようにきらめくこの街で、一人ひとりが、娯楽からであれ芸術からであれ、それともコメダから、本当に輝く何かをつかんでいけたなら。

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