さんかく屋根の下

コメダ写真館

イシガミ
2024/06/27 15:04

コメダのもてなし

この日の勝者はコメダ、それもマスカットでした。

もともとは、ペッパーポークとたまごをトーストで食べるのがメインのつもりでした。この日に限って、コメダで、お腹を満たしたうえで集中したいことがあったからです。

おいしかったです。サンドイッチとはまた違ってかぶりつく感じが、元気が出ます。

きれいさでいうと、もちろんたまごはもりもりでした。それに関しては、テーブルを汚したり、ひどいときは逃げ腰でソファを汚したりするくらいなら——おてふきできれいにしたうえで——手を汚すことだと自分は思っています。ポロッとこぼれたのはそのまま食べればいいし、唇で取れない汚れは、同じおてふきのきれいな面で拭き取ればマナーにも反しないでしょう。

そのほか、顎を使って口を上下に大きく開けることと、何よりも、各種バーガーやカツパンのときと同じように、口に入ったら、噛みついたり噛みちぎろうとしたりするのではなく、腕と首両方のバランスで、歯が具材に食い込んだかどうかくらいのところでそっと離してあげるのに気をつけて食べました。

そのようにして、いまどきコメダくらいの食べづらさは解消しました。そのぶん、おいしさに集中できて豆菓子が一つも減りませんでした。

あとは、取り上げることといったら、辛子が唇についてしまったときでしょうか。そうなると、これは辛いものが苦痛でない舌のひとでも少なからずつらいのではないかと思います。自分の場合は、つらさを顔に出したり無闇にハンカチを取り出したりするよりも、ピリピリポーク、ふわふわたまごとシャキシャキレタスのハーモニーを感じることで乗り切りました。

忘れてはならないのがドリンクです。この日はアイスミルクにしました。コーヒーでもよかったのですが、この食べものにいちばん合う、自分の本当に大好きだった飲むものを思い出したら、すんなりそう決まりました。描いたとおり、合間合間に飲むと、具材のおいしさがいっそう感じられました。

甘みは、入れないでもらいました。砂糖の甘みがついた冷たいミルクだけは、昔から、水で薄まったミルクと同じくらい、それだけは飲めないほど苦手です。


食べ終えて、さてコーヒーを追加して持ち込んだものに手をつけようとすると、親切なスタッフさんが、新作ケーキの案内をしてくれました。こちらでは、迂闊にもあと回しでいいと考えていた初日のことです。

すぐさま、思い直しました。持ち込んだものはやはり脇へ戻し、セットにしたうえで、いちばん気になっていたケーキを持ってきてもらいました。目下人気ナンバーツーのふわるシフォンです。

おいしかったです。りんごのタルトを彷彿とさせるぷるぷるのジュレが、今度は、果肉がなく透き通ったぶんもっと輝いて見えました。そっとフィルムを剥がしていく時間がいつもどきどきします。いよいよ切り込むと、甘い果物の香り、それを口もとへ運べばよく焼けた小麦粉とたまごの香りが漂い、舌に乗せればクリームが甘くも爽やかに溶け、最後は、寝かせてクリーム一色になったエメラルドグリーンの厚いふわふわを、コーヒーは控えめにして、思う存分味わいました。

いままで食べたケーキのなかで、いちばんおいしかったです。


失敗だったのは、ドリンクのほうです。

というのは、ケーキがおいしすぎたのと、もともとはコーヒーだけでゆっくりするつもりでたっぷりを頼んでいたため、食べ終えた時点で、コーヒーが半分以上残ってしまったのです。いざ脇へ退けたのを再開しても、ケーキの余韻が消えずに集中できません。ミルクの入ったコーヒーも、段々と冷めていきます。

気がつくと、あんなにおいしいケーキを食べたはずなのに、浮かない顔をしていました。

昔の自分であれば、そこで挫けてしまっただろうと思います。しかしいまでは、この二年間コメダでおいしいものをたくさん食べて身についた勇気があります。どうしたらいいか、急がずに思いめぐらしました。

これ以上おいしいものは何かではなく、自分が本当に好きなものは何か、自分が見てきたはずものは何だったのかを、虚心に描いてみました。

それは、いちごのかき氷でした。

おいしかったです。先ほどまでの沈んだ様子が嘘のように、一度手に持った器を二度と下に置かず、指先の冷たさも心地よく、すべてが、ほとんど溶けないうちに食べ切りました。最後のいちばんきれいな溶けかけだけは、盃を仰ぐようにして飲み干しました。

かき氷というと、子どものころ、お気に入りのシロップはみぞれだったのを思い出します。みぞれを知ってからはそれしか食べなかったものです。もしかしたらそれは、白い冷たいミルクが大好きだったのと根を同じくしているのでしょう。

いまでは、コメダに育てられ、世界が前よりも豊かな彩りをもって経験できるようになりました。わけても、この大事な日にそうさせてくれたのは、素晴らしい案内をしてくれたスタッフさん、そしてすべての支え合うスタッフさんたちだったといわなければなりません。

この日、この場所で勝ち負けがあったとすれば、それはこの自分の中途半端さを優に上回った、コメダのおもてなしです。

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1 件の返信 (新着順)

こんばんは(^^)イシガミさん
今日はたくさん食べましたね?🤠
ちょっと最後のかき氷の登場にビックリしました(^^)
 うんうん、いつものイシガミさんの食レポ💞
とワクワクしながら拝見していたら…👀
かき氷まで👀🤠
 とっても満足されたようですね😄

私も同じケーキ今朝食べました😋
ふわるシフォン😋確かにおっしゃるとおりの甘い果物の香り!しました(^^)


イシガミ
2024/06/29 07:49

さっちゃんさん、コメントありがとうございます。
さっちゃんさんもシフォンケーキでしたか、おいしいですよね。
かき氷は自分でもびっくりでしたが、食べ出したら自然そのものな感じでしたよ。
いつも食レポを楽しんでいただけて、何よりです。