純粋な色
スーパーの特売で、ちょっといいパンが買えました。
持ったときふわっとして、ジャムが果実感しっかりめでおいしかったです。コーヒーにミルクを入れたら、全体に甘酸っぱくもまろやかにまとまりました。

あまり殺風景ではと思い、書棚から、清須で買った絵葉書を出しました。
円窓から飛び出た様子の二匹の犬は、弥生時代に東海地方最大の集落が営まれた、愛知県清須市と名古屋市西区にまたがる朝日遺跡を紹介する博物館「あいち朝日遺跡ミュージアム」のマスコットキャラクター、アカとクロです。彼らの描かれた絵葉書が、黄色と白と、ミュージアムショップに二種類ありました。
その日は秋らしく、金色の穂をなびかせる稲田を縫って到着しました。黄色を選んだのは、その強い印象が続いていたからです。

見ためどおり、アカはちょっと天然な弥生犬、クロはクールで静かな縄文犬です。
どちらも、言葉を話します。二人とも頭部が特徴的ですが、それはどういうわけか、朝日遺跡出土品の目玉である、尾張地方でだけ生産された円窓付土器にはまってしまったということです(そのほか、赤彩土器、銅鐸・銅鏡・巴形銅器、勾玉と管玉、骨角牙製装身具、鍬・鋤・杵・石包丁、石鏃・石剣、漁労具と紡織具、磨製石斧、鳥形木製品と土製品、木偶、卜骨などが常設展示され、屋外には、地域の園児が走り回れる芝生とともに竪穴住居と高床倉庫が復元展示されています。念のため、円窓付土器に耳が出せる穴は本来空いていません)。


面白いのは、彼らの名前と毛色です。
というのも、アカはアカといいつつブラウンだし、クロはクロで、どう見てもグレーだからです。しかし、仮に「アカ」が「赤」で「クロ」が「黒」の意味だとして、意味の認識よりも感覚による認知に従い、それぞれの毛色を「赤っぽい」、「黒っぽい」と理解したとき、名前への違和感は生じないでしょう。
いったい、純粋な赤は存在するのか、純粋な黒は? そして、純粋な金色とは——

古代ギリシアの哲学者、プラトンのイデアにかかわらず、自分は、それは真理を解するひとの心のなかにある気がします。
赤といったら赤であり、黒といったら黒なのだ、ということができるでしょう。ちょうど、コメダが提供するメニューの分量に疑いを差し挟む余地がないように。あるいは、遡れば、現在ソフィアの名称で親しまれるコメダ唯一のシングルオリジンコーヒーが、真鍮の持ち手にしかその要素がないにもかかわらず、かつて金のアイスコーヒーと呼ばれていたように……。
嘘つきと、邪悪な疑念を抱くひとを除けば、そのようにすべては円く収まるように、自分には思えます。
