2025/08/08 00:45
夏に雪が降ったのは、数十年ぶりのことだという。
少なくとも春生の記憶の中にはなかったし、本に読んだこともなかった。だが、春生は夏の雪のことは知っていた。
夏の雪は羊を混乱させ、彼らは途端に発情期に到達した。そのほかのありとあらゆるものの周期はぐるぐるに回転した。女は童話の中の狂った時計を見るようにそれを柱に持たれながらむずと観察し、満足すると春生の腕を使って寝た。
飲んでいたブラックコーヒーはミルク入りの甘い紅茶に変わっていた。そうではない可能性についても考えてみた。女が隣で寝ているのは久しぶりなので、味覚もそれに合わせたのかもしれない。
明日のことを考え始めてしまう前に彼女を起こした。男は連れの女と2人で店を出た。
元来この店に余韻というものは存在しないし、余韻以外のものは全て存在した。
小太りの中年女性がテーブルの上をすぐにきれいにしてしまった。
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芥川賞狙える👍✨