ジュエルトースト
名古屋城のテクストをじっくり読みたくて、コーヒーをたっぷりにしました。
この日のトーストは、ジャムの感じがまた違いました。その日その時間のお店のさまざまな要素から帰結した、一種の自然現象といえるでしょう。
それに触発されて、たまごを、ジャムが活きるように盛りました。

悪くない感じがしました。等分にできたのが、このごろはいちめんに広げてばかりだっただけに新鮮でした。
しかしひと目見て、真ん中と下が内側にベタッとなっているのはみっともない気がしました。
もし、そのあたりにもジャムが目立って塗られていたのなら、上と同じようにブレーキになってくれたに違いありません。ともあれそのみっともなさは、ひとに差し出すのをためらうほどでした。かといって、自分が食べるものなのだからべつにいいとも思えませんでした。他人を大切にするのと同じくらい自分を大切にすることを、みずからの課題としているからです。
そんな考え事にも、せいぜい5秒をかけただけです。それよりも、食べました。

はじけるほどおいしかったです。たまごとジャムの組み合わせに、もうすっかり慣れました。
面白かったのが、上と真ん中のあいだで目に留まった、ジャムの塊です。
普通のいちごジャムですから、まさか果肉ではなく、文字通りジャムの塊です。それを、とくに活かして食べたいと思いました。
このごろは、モーニングのトーストは、真ん中を最後に食べるのがつねです。

いちばんおいしいふわふわを、最後に目いっぱい楽しみたいからです。このふわふわは、こういうとパティスリーに怒られそうですが、ほとんどスポンジではないでしょうか。
そんなさくふわを、まだ冷めないコーヒーと一緒に、最後のお楽しみで食べました。

おいしかったです。
まるで宝石のルビーを食べるようで、噛めば噛むほどまろやかさと塩気が溶け合ってきて、それはもう——元気いっぱいで、翼でも生えたような足取りで出発しました。
